眠る前の呪文

『海のはじまり』　ー工藤直子


ひとはみな
心のなかに海をひとつ　もっている
その　濃いみどりの海のうえに
ときどき　ちいさな魚がはねて
ときどき　ちいさなしぶきがたつ
ひとの心のなかに
いつ　海はうまれたか

おそらく　むかし
ーなにが悲しいのか
ーわからないほど　ちいさく
ーなにがつらかったか
ー忘れてしまうほど　むかし
ひとは　みな
はじめてまるい口をあけて泣いた
あのときの涙の粒が　海のはじまり

泣くたびに流れた塩からい涙は
だれにも知られぬ場所に
あふれあふれ
ーそれはたしかに　悲しみの波
ーそれはたしかに　つらさのうねり
それはたしかに　そうなのだが

ごらん　いつのまにか
涙の海に　生まれそだった
泳ぐものたち
笑い　歌い　そして遊ぶ　泳ぐものたち

ひとはみな　いつだって
塩からくて　にぎやかな
海を　抱いているのだ


・・・・・　・・・・・

工藤さんは心の中に海がある言っていますが、
わたしは涙即ち眼の中に海があると言われている気がして、
自分は海と繋がっているのだ、と安心して眠れるのです。
怖がらなくてもいのちの輪は繋がっているのだよ、工藤さんに言われた気がして。

香り放ちつつある沈丁花

ダンスの師匠にイベントに連れて行ってもらう。

出演ダンサー：
辻本ともひこ、
川村しゅうた、
増森ともこ＆ポールダンス世界チャンピオン
三東瑠璃。


コンテンポラリーダンスとポールダンス。

三東瑠璃さん（レニバッソの方です）を初めて目撃する。
気配、ダンス共に、一瞬で何処かに連れて行かれた。

フロアが混み出す前、
変な動きしながら近付いて来る人がいるな〜、と思ったら師匠に接近してきた三東さんでした。（その時点でノックアウト。変な人だ。←これ私最大の褒め言葉）

ポールダンスの内容にも十数行費やしたいのだけれど、
好みとして個人的に一番惹きつけられたのが三東さんなので、
ひとまず此処にお名前を挙げ、続きはまたいつか。

なぜなら的を得て突き刺さるダンス群に魂が未だビックリしているから。


でも、ポールダンス。機会があったら是非。格好良い（しかも綺麗）ですよ〜。
「エロ」を通り越して動物的本能的美しさの方を強く感じた。身体の線がなめらかなのにすごいポーズを連続。あ、でも勿論エロさもあってそこにまた感動。

音を楽しむ心

点滴室で背中を撫でられる　の巻き

なぜなら止まらない悔し泣き。
顔からいろんなものがだらだら垂れる。（ヨダレは大丈夫でした）

今まで感覚でしか感じていなかった大きなしこりが、
カウンセリング中初めて言語化し意識化。
驚き、動揺したまま、
直後診察で医師からこれまた痛恨（会心？）の一撃。


もうたまらなく悔しくってね！、いろいろが。

久々に立ち戻った。いやそこに居たまま？



夜は愛する人々のライヴを聴きに行く。
数年振り。デビュー後初。
ドリムーン（英語＋マークなのでカタカナ表記で失礼。）といいます。

バンドの人々（女の子含めて）男前度を上げていた。
むき出し感、切迫感、限界感。そして礼儀正しさ。
あの魅力はなに？
あまりに大きさを増していてお母ちゃんうれし泣きしそうになる。

「ロック」をどう思っているかと問われたらうまく答えられないけれど、
ほかの共演バンドの皆さん共に今回はロック魂のかたまり。
暴れまくって踊る表現。すごくたのしそう。かっちょ良かった。
わたしはやっぱり”全開な人”に魅かれてしまうのだな〜。

カウンセリングの悔し泣きがちっぽけに思えた。
でもいま自分が其処にいることは認めるしかない。
生の音は気持ちええね。

君はテレビっ子

初回を逃したので我慢していた野村萬斎さん主役のNHK『鞍馬天狗』。
最終回なのについ観てしまう。


京野ことみさん綺麗になったな〜。
とても好み。
鞍馬天狗の正体を知って泣いてた。
きれいな顔だったな。

土方歳三役（近藤勇だったかも）の緒形直人さんが、
あまりにも、
あまりにも男っぷりを上げていて感動した。
佇まいが舞踊家のようだった。

すごい。
人はこんなに変わるのか。
人のこと見てる場合じゃないと思った。

どうかなどうかな

護国寺。

白百合荘。

風呂なし（近所に銭湯アリ!）。トイレ共同。女性限定。四畳半。
家賃2万8000円。

わたしには充分なんだけど。

本日こころに響いたことば

『あいたくて』　ー工藤直子

だれかに　あいたくて
なにかに　あいたくて
生まれてきたー
そんな気がするのだけれど
それが　だれなのか　なになのか
あえるのは　いつなのかー

おつかいの　とちゅうで
迷ってしまった子どもみたい
とほうに　くれている

それでも　手のなかに
みえないことづけを
にぎりしめているような気がするから
それを手わたさなくちゃ
だから

あいたくて


『工藤直子詩集』より

あれは何処だったか

中学生が学園祭ではしゃぎまわるなか、
わたしは自転車をとりに外に出る。
一気に空が曇りどしゃぶりに。
数分して霧雨になり、陽に照らされてシャツが乾く。

フと小さい人影があちらこちらに。
猫やサボテンや亀などいろんな姿をした土偶が、そして羅漢さんが、
もの静かに眩しそうに嬉しそうにあちこちを歩いていた。

土偶はちょっと物思いにふけってる感じで。
羅漢さんは横一列道いっぱいに広がって、ニコニコ話していた。


ー以上　　夢


・・・・・
近年、まるで見納め間近かのように、毎年母親が丁寧にお雛様を出す。
しかし結局その翌年も私が当たり前のように自宅に居るので
お雛様は再び登場することになる。

30余年経っても年数日のお目見えだと、人形の顔も着物も色褪せることがない。
綺麗な朱色の着物を着た下ぶくれ顔のお雛様。

「来年お逢いする時はもう家を出ていますように。」
心の中でそう話しかけた。
「あたしも毎年そうお願いしてるんだけどねぇ！」と母もため息。

アネモネ

花屋にて。

大好きなラナンキュラス。

その横に赤々としたアネモネが。
アネモネ綺麗だなー。
なぜそこまで赤い？
綺麗だなー。
首をかしげるアネモネ。
綺麗だなー。

春だなー。



メモ：
遭難死した山仲間の遺体をクレパスの合間をぬって10年間探し続けた人。
中国の農村部の教育。
ドイツの森の学校。アントン。

メモ2：
傷があって当然。傷があってナンボ。それが止まる原因にはならない。

見きり

食べて済めばいいんですけどね
泣いて済めばいいんですけどね
駄々をこねて済めばいいんですけどね
求めて済めばいいんですけどね
立ち止まって済めばいいんですけどね
暴れて叫んで済めばいいんですけどね
叩いて済めばいいんですけどね

眠っても変わらない
お茶を飲んでも変わらない
ダンスを観ても変わらない
ライヴに行っても変わらない
マスカラつけても変わらない
文字打ちつけても変わらない
毛布洗っても変わらない

求めても変わらないもの
反応ないもの
こちらを見ないもの
大事にしてくれないもの
終わりのないもの
抱えきれないもの
伸びてゆかないもの

詩の時間

「あなたはそこに」
谷川俊太郎

あなたはそこにいた　退屈そうに
右手に煙草　左手に白ワインのグラス
部屋には三百人もの人がいたというのに
地球には五十億もの人がいるというのに
そこにあなたがいた　ただひとり
その日　その瞬間　私の目の前に


あなたの名前を知り　あなたの仕事を知り
やがてふろふき大根が好きなことを知り
二次方程式が解けないことを知り
私はあなたに恋をし　あなたはそれを笑いとばし
いっしょにカラオケを歌いにいき
そうして私たちは友だちになった


あなたは私に愚痴をこぼしてくれた
わたしの自慢話を聞いてくれた　日々はすぎ
あなたはわたしの娘の誕生日にオルゴールを送ってくれ
わたしはあなたの夫のキープしたウィスキーを飲み
私の妻はいつもあなたにやきもちをやき
私たちはともだちだった


ほんとうに出会ったものにわかれはこない
あなたはまだそこにいる
目をみはり私をみつめ　くりかえし私に語りかける
あなたとの思い出が私を生かす
早すぎたあなたの死すら私を生かす
はじめてあなたを見た日からこんなに時が過ぎた今も



・・・　


新しく知り合ったこれから良い友人になれたらいいな、という方が教えてくれた
谷川俊太郎さんの詩です。

谷川さんの詩によって生かされたのは何度目だろう．．．